失業保険の給付制限は自己都合退職が対象|アルバイトの条件や期間を短縮する方法を解説
自己都合退職をすると失業保険に給付制限があります。
給付制限の存在は知りつつも「具体的にどのくらいの期間制限がかかるのかわからない」という場合があるかもしれません。
そこで、本記事では給付制限の概要から注意点まで詳しく解説していきます。
給付制限を解除する方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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目次
失業保険の給付制限とは?
失業保険の「給付制限」とは、文字通り失業保険が受け取れない期間のことです。
給付制限の対象となるのは、自己都合退職をした人のみです。
失業保険の受給手続きをすると、原則7日間に待期期間があります。
自己都合で退職した場合、この待期期間の翌日からさらに2カ月間(条件によっては3カ月間)、失業保険がもらえない期間が発生します。
給付制限について理解を深めるために、以下の3つのポイントを見ていきましょう。
- 給付制限の目的
- 待期期間との違い
- 給付制限が始まるタイミング
失業保険を受給している間の計画が立てられるように、詳しく解説していきます。
給付制限の目的
給付制限の目的は、受給資格者が失業保険に依存して求職活動を先延ばししないように防止することです。
自己都合で退職した人の中には、働く意思がない、または労働意欲が低い人もいる可能性は否定できません。
そのため、5年間に自己都合退職が3回以上ある場合は、給付制限の期間は2カ月から3カ月に延長されます。
具体的な期間は、以下の表にまとめてみました。
就業期間 | 給付制限期間 |
令和1年4月1日〜令和3年4月31日 | 自己都合退職1回目に失業保険をもらうと 2カ月間 |
令和3年5月1日〜令和5年5月31日 | 自己都合退職2回目に失業保険をもれうと 2カ月間 |
令和5年6月1日〜令和7年6月31日 | 自己都合退職3回目に失業保険をもらうと 3カ月間 |
また、給付制限は再就職手当とも関係しています。
給付制限中の最初の1カ月間は、ハローワーク又は職業紹介事業者からの紹介で就職した場合しか、再就職手当の対象になりません。
待期期間と給付制限の違い
失業保険には、支給が受けられない期間として「待期期間」と「給付制限」の2種類があります。
大きな違いは、待機期間はすべての人に適用されるのに対して、給付制限は自己都合退職者に適用される点です。
初回の失業保険給付までの具体的な期間は、それぞれ以下の表のとおりになります。
離職理由 | 初回の失業保険支給までの期間 |
自己都合退職者ではない場合 | 7日間(待期期間)+初回認定日までの日数 |
自己都合退職者の場合 | 7日間(待期期間)+2〜3カ月間(給付制限)+2回目の認定日までの日数 |
また、待期期間は完全な失業状態でいる必要がある一方で、給付制限中は週20時間未満の仕事が認められています。
給付制限が始まるタイミング
給付制限が始まるタイミングは、待期期間が満了した翌日です。
失業保険を受給するまでの具体的な流れは、以下のとおりになります。
- ハローワークで求職申込
- 7日間の待機期間
- 2〜3カ月間の給付制限
- 雇用保険受給説明会
- 失業認定(初回認定日)
- 2回目の失業認定|失業保険の支給開始
給付制限中でも「雇用保険受給説明会」や「失業認定」のために、ハローワークへ通う必要がある点に注意しておきましょう。
自己都合退職でも失業保険をすぐもらう3つの方法
自己都合退職であるからといって、必ず給付制限が設けられるわけではありません。
給付制限を解除して、すぐに失業保険をもらう3つの方法を解説します。
- 就職して再就職手当をもらう
- 特定理由離職者に認定してもらう
- 職業訓練を受講する
適用されるには条件があるため、詳しく見ていきましょう。
就職して再就職手当をもらう
自己都合退職で失業保険をすぐもらうなら、再就職手当をもらうことも一つの手段になります。
再就職手当とは、失業保険の受給中に安定した職業に就職したり、事業を始めたりすると支給される手当のことです。
失業保険を満額受給することはできませんが、給付制限中でも支給残日数の70%の額を再就職手当として受給できます。
ただし、再就職手当を受給するには、以下の8つの条件をすべて満たすことが必要です。
- 失業保険の支給残日数が3分の1以上あること
- 1 年以上勤務する見込みがあること
- 待期満了日以降の就職であること
- 給付制限がある場合は待期満了から1カ月間はハローワーク又は職業紹介事業者の紹介であること
- 離職前の雇用先や関連事業主への再就職ではないこと
- 3年以内に同様の支給を受けていないこと
- 受給資格決定前から採用が内定してないこと
- 原則として、雇用保険の被保険者資格を満たす雇用であること
参考:再就職手当のご案内
とはいえ、再就職の目的はあくまで自分に適した仕事に就くことです。再就職手当を受け取りたいからといって、焦って安易に就職先を決めることは避けましょう。
特定理由離職者に認定してもらう
自己都合退職でも「特定理由離職者」に認定されると給付制限を受けずに失業保険を受給できます。
特定理由離職者として認定される退職理由の例は、以下のとおりです。
- 体力の不足や心身の障害
- 妊娠・出産・育児
- 家族との別居生活が困難
- 結婚に伴う住所変更
該当する詳しい退職理由は、以下もあわせてご覧ください。
ただし、認定されるかどうかはハローワークの判断次第です。
申請したとしても認められなければ「特定理由離職者」として求職することはできません。
また、所定給付日数については自己都合退職者と原則として同じ「90日〜150日」です。
給付制限を受けないからといって、会社都合退職と同じ所定給付日数にはならない点は覚えておきましょう。
職業訓練を受講する
自己都合退職でも、職業訓練を受講すると訓練開始日の前日に給付制限が解除されます。
職業訓練とは、再就職に向けて無料で知識や技術を習得できる制度です。
具体的には、以下のようなコースを受講できます。
- Web制作
- プログラミング
- 介護
- 簿記・経理
- 一般事務
- 社内/社外広報
ハローワークに認められると、訓練終了まで失業保険が延長されたり、通所手当や受講手当が受給できたりするメリットがあります。
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職業訓練に興味がある方は「職業訓練の申し込みの流れ8STEP|申込書の書き方や必要なものも解説」で申込方法を確認してみてください。
失業保険の給付制限中にアルバイトするための3つの条件
失業保険の給付制限中は、アルバイトで生活費を稼ぐことも可能です。
ただし、条件を守らないと失業保険の支給先送りや減額もあり得るので注意してください。
失業保険の給付制限中にアルバイトするために注意したい条件は、以下の3つです。
- 待期期間が満了してから働くこと
- 週20時間未満・31日未満の労働であること
- 失業認定日に内容を報告すること
給付制限の期間中にアルバイトを考えている方は、順番に確認しておきましょう。
待期期間が満了してから働くこと
待期期間中に働いてしまうと、待期が延長されてしまうので注意が必要です。
ハローワークは待期期間中、離職理由に関係なく失業保険の受給資格者が「本当に失業状態にあるか?」を判断します。
そのため、少しでも働いてしまうと「就職」とみなされてしまって、失業保険を受給するには働いた翌日からさらに7日間の待期期間を過ごさなくてはなりません。
具体的な待期期間の数え方は、以下のようなイメージです。
働いた日数 | 待期期間 |
アルバイトしていない | 受給資格決定日を含めた7日間 |
1日1時間だけ働いた | 働いた翌日からさらに7日間 |
給付制限中にアルバイトを考えている場合は、待期期間が満了してから働き始めましょう。
週20時間未満・31日未満の労働であること
給付制限中のアルバイトは、週20時間未満で31日未満の雇用契約であることも重要です。
なぜなら、週20時間以上で31日以上の雇用が見込まれると、雇用保険への加入が必要になるからです。
アルバイトやパートであっても、雇用保険への加入は「就職」とみなされてしまいます。
また、31日未満の雇用でも、以下のように雇用保険の加入対象になるケースも考慮しておきましょう。
- 雇用契約に更新する場合がある旨の規定があり、31日未満での雇い止めが明記がないとき
- 雇用契約に更新規定はないが、同様の雇用契約で31日以上雇用された労働者がいたとき
自分が雇用保険の対象になるかわからないときは、管轄のハローワークに相談してみてください。
失業認定日に内容を報告すること
給付制限中のアルバイトやパートなどの仕事内容は、失業の認定日にハローワークに報告する必要があります。
失業の認定日とは、失業保険の受給者がハローワークに失業状態であることを認めてもらい、失業保険の給付続行を判断してもらう日のことです。
失業の認定では、求職活動を最低2回以上おこなった実績を「失業認定申告書」で報告します。
求職活動の実績として認められるものは、以下のとおりです。
- 求人への応募
- ハローワークの職業相談・セミナー
- 認可・届出のある民間事業者の職業紹介・セミナー
- 再就職に必要となる資格試験
求職活動を報告できない場合は、失業保険の支給が先送りされてしまいます。
失業を認定する前日までに、求職活動をしておきましょう。
給付制限中に無申告でアルバイトしたことがバレる3つの理由
給付制限中に申告なしでアルバイトをすることは、必ずバレてしまうので絶対にやめましょう。
バレてしまう具体的な理由は、以下の3つです。
- ハローワークは雇用保険を管理しているため
- 雇用主は「給与支払報告書」を市区町村に提出するため
- 知り合いから通報されることもあるため
無申告がバレると、失業保険の支給停止や受給した3倍の額の返還を求められる可能性もあります。
正しく受給するためにも、それぞれ詳しく見ていきましょう。
ハローワークは雇用保険を管理しているため
雇用保険の手続きはハローワークでおこなわれるため、雇用保険に加入するくらい働くとすぐバレます。
参考:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか! |厚生労働省
また、雇用保険の加入は雇用先が手続きするので、自分の意思とは関係ないタイミングで進められます。
バレていないと思っていても、忘れたころに発覚する恐れもあるので、安易に黙って働くことはやめましょう。
雇用主は「給与支払報告書」を市区町村に提出するため
雇用主が市区町村に提出する「給与支払報告書」もアルバイトがハローワークにバレる理由の一つです。
給与支払報告書は、市区町村が各個人の税金を計算するために、雇用主が支払った給与を報告する書類です。
市区町村の行政はマイナンバーで給与支払報告書の情報を連携して、税金の計算を進めます。
ハローワークでもマイナンバーの情報にアクセスできるため、申告していないアルバイトやパートがバレてしまうというわけです。
知り合いから通報されることもあるため
アルバイトがハローワークにバレる理由で一番多いのは、意外にも知り合いからの通報です。
家族や友人、バイト先の同僚など、身近な人だからこそ不正に対する正義感から通報してしまうのかもしれません。
通報者は公表されないので、自分自身の中で疑心暗鬼になって人間関係が悪化する可能性もあるでしょう。
不正が明るみになると、罰則だけではなく、日常生活の平穏を失うリスクもあります。
再就職を成功させるためにも、失業保険の受給中に働くのなら、正しい条件の中でアルバイトやパートを始めてください。
FAQよくある質問
失業保険の給付制限撤廃はいつから?
失業保険の給付制限撤廃は、まだ検討段階です。
しかし、政府は成長産業への転職促進に前向きな姿勢を示しており、自己都合退職の場合でも給付制限を失くす方向で進められているようです。
より詳しい内容が知りたい方は、以下も参考にしてください。
60歳以上で定年退職した場合の失業保険に給付制限はある?
60歳以上で定年退職した場合は、失業保険の受給に給付制限はありません。
そのため、待期期間を満了した翌日から失業保険の受給対象になります。
ただし、失業保険を受給している間は年金の支給が停止することは考慮しておきましょう。
詳しくは、以下もあわせてご覧ください。
給付制限中に内定をもらうと失業保険はどうなる?
給付制限中に内定をもらった場合は、入社日の前日までの支給日数分を失業保険で受給できます。
また、支給日数が1/3以上残っている場合は「再就職手当」も申請可能です。
詳しい申請方法は「早期就職で受け取れる「再就職手当」について、職業訓練校が解説します」をご覧ください。
給付制限中でも1日4時間以上のアルバイトは失業保険を先送りされる?
給付制限中においては、1日の労働時間に制限はありません。
ただし、週20時間以上働いてしまうと「就職」とみなされて、失業保険の給付が停止する可能性もあります。
また、雇用契約が明確でない場合も「就職」とみなされる危険性があります。
勤務先に労働時間と契約内容を明記した「雇入通知書」を作成してもらうと、万が一のときの証拠になって安心です。
さいごに
本記事では、給付制限の概要から注意点まで解説してきました。
給付制限は、失業状態でありながら就職する意欲があることを示す期間です。
そのため、自己都合退職後は、失業保険の受給がない状態で2〜3カ月を過ごさなくてはなりません。
ただし、職業訓練を受講した場合は、給付制限を解除できます。
職業訓練は、希望の仕事に就くために無料でスキルアップできる制度です。
訓練によっては「ジョブトレ」のように在宅で受講もできます。
職業訓練が気になる方は、以下のリンクから詳細をチェックしてみてください!
一覧へ戻る監修者
平原正浩
ワークキャリア株式会社 求職者支援訓練 本部運営チームリーダー
ワークキャリア株式会社の本部にて、職業訓練校「ジョブトレ」の運営業務全般を統括する。主な業務は訓練制度の把握や訓練運営体制の整備、開校申請など。
ライター
いしい ゆうすけ
Webライター
ワークキャリア株式会社の求職者支援訓練事業「ジョブトレ」にて、SEOメディアの執筆を担当。過去に販売職から営業職への転職経験あり。自分自身が悩みながら行動した経験をもとに、読者の問題解決につながる記事を目指して執筆している。