職業訓練中は扶養に入れる?|扶養から外れる条件・失業保険などが扶養に与える影響を解説
現在扶養に入っている方や、これから扶養に入る予定の方のなかで、スキルを身につけながら就職サポートも受けられる職業訓練が気になっている方もいると思います。
職業訓練と扶養との関係は複雑なため、「そもそも扶養に入りながら職業訓練を受けられるの?」と疑問をお持ちの方も多いでしょう。
また、失業保険や職業訓練給付金をもらいながら職業訓練を受ける場合、扶養条件にどう影響するかも気になるところですよね。
今回は、職業訓練は扶養に入りながら受講できるのかや、失業保険や職業訓練給付金が扶養に与える影響についてわかりやすく解説していきます。
さらに、職業訓練卒業後に扶養の範囲内で就職してもいいのかどうかについても触れていきます。
ぜひ、参考にしてみてくださいね!
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職業訓練は扶養に入りながら受講できる!
結論からいうと、職業訓練は扶養に入りながら受講できます。
職業訓練は、仕事を探している人が必要な知識やスキルを身につけ、就職を目指すための公的制度です。
そのため、ハローワークから紹介を受けるときや選考試験で重要視されるポイントは「就職の意思があるかどうか」です。
就職の意思があれば、扶養に入っているかどうかは関係ありません。
ただし、職業訓練は応募すれば必ず受講できるわけではなく、面接・筆記の選考試験に合格しないと受けられません。
希望の職業訓練に合格するために、筆記試験対策や、面接で明確な志望動機を伝えられるように対策しておくことをおすすめします。
次の記事では、筆記試験の内容と対策法を詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
参考記事:職業訓練の試験はむずかしい?|試験内容と対策法をくわしく紹介
職業訓練中に扶養から外れる条件は?
職業訓練は扶養に入りつつ受講できますが、失業保険や職業訓練給付金をもらいながら受ける予定の方は注意が必要です。
なぜなら、受け取る金額によっては扶養から外れてしまう場合もあるからです。
また、職業訓練中にバイトやパートで収入があれば、当然その金額にも注意が必要です。
ここからは、職業訓練中に扶養から外れてしまう場合の条件について解説していきます。
そもそも扶養は「税制上」と「健康保険・年金上」の2種類ある
そもそも扶養には「税制上の扶養」と「健康保険・年金上の扶養」の2種類あることを知っていますか?
それぞれ扶養に入るメリットと、扶養から外れてしまう金額の条件(いわゆる年収の壁)は変わります。
主な違いを表にまとめると、次のようになります。
「税制上」の扶養 | 「健康保険・年金上」の扶養 | |
得られる メリット | ・扶養してくれる人の税金が軽減される | ・自分で保険料を払わなくても健康保険証が発行される ・国民年金保険の納付義務がなくなる |
年収の壁 | ・103万以下 | ・130万未満 |
収入の範囲 | ・非課税収入(失業保険・給付金も含む)は収入とみなされない | ・継続性のある収入すべて年収とみなす ・非課税収入(失業保険・給付金も含む)も収入に含まれる |
収入を計算する期間 | ・1月1日~12月31日で計算 | ・扶養に入った時点から1年間で計算 |
それぞれ扶養に入れるかどうかは、扶養される人の年収で判断されます。
そして、失業保険や職業訓練給付金をもらいながら職業訓練を受ける方が、とくに押さえておくべきことは「年収とみなされる範囲が違う」という点です。
【税金上の扶養(103万の壁)】
・失業保険や職業訓練給付金といった非課税収入は、年収とみなされないため、
受け取っていたとしても扶養に影響しない。
上記の点から「税制上」の扶養のことはあまり気にしなくても問題なさそうです。
【健康保険・年金上の扶養(130万の壁)】
- 失業保険や職業訓練給付金も年収として計算される。
- 基本手当とは別に受講手当、通所手当なども受け取る場合は、それらも年収とみなされ加算される。
つまり、扶養に入った時点から1年後までに受け取る金額(見込み)が年間130万以上になる場合は「健康保険・年金上」の扶養から外れる可能性があるということです。
これらの前提知識を踏まえて、失業保険や給付金をもらいながら職業訓練を受ける場合に、扶養から外れてしまう条件について解説していきます。
多くの人が、扶養内でいることのメリットが大きい健康保険・年金上の扶養(130万の壁)について気になっていると思うので、そちらに絞って解説しますね!
「失業保険」を受ける場合
失業保険をもらいながら職業訓練を受ける場合、扶養から外れるかどうかの判断基準は下記になります。
【扶養の判断基準】
- 失業保険(受講手当、通所手当を含む)の合計金額が日額3,612円以上となる場合、扶養から外れる可能性がある
※失業保険は日額で支給されるので、年間130万ではなく、日額3,612円で判断されます。
失業保険の基本手当だけなら日額3,611円以下だったとしても、受講手当(1日500円)と通所手当を足した金額で計算されるので注意しましょう。
通所手当とは、職業訓練校に通うための交通費手当のことです。次の記事で、職業訓練でもらえる交通費の金額について詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください!
参考記事:職業訓練中にもらえる交通費|支給条件・車や自転車の場合など解説
「職業訓練給付金」を受ける場合
職業訓練給付金をもらいながら職業訓練を受ける場合、扶養から外れるかどうかの判断基準は下記になります。
【扶養の判断基準】
- 給付金(月10万円)と通所手当の合計金額が月額108,333円を越え、12カ月で年収130万以上となる見込みがある場合、扶養から外れる可能性がある
こちらも月10万の給付金だけでなく、通所手当も合わせた合計金額で判断されるので注意しましょう。
受講期間が3カ月など短いコースの場合は、給付金も3カ月しか受け取らないため、扶養の範囲におさまることもあります。
ただし、保険組合によっては「月額108,333円が3カ月続く場合は扶養から外れる可能性がある」としているところもあります。
最終的な判断は各保険組合が決める
ここまで、扶養から外れる「可能性がある」と断定を避けたのは、扶養認定の判断は加入する保険組合によって細かくルールが違うからです。
保険組合には、協会けんぽ・健康保険組合・共済組合などさまざまな種類があり、それぞれ独自の基準を持っています。
悩んだときは、扶養してくれる人の会社を通して確認したり、加入している保険組合に直接問い合わせてみたりするのが一番確実です。
バイトをするなら当然その収入は年収として加算される
職業訓練中にバイトやパートをした場合、当然その収入も年収として加算されます。
失業保険や給付金をもらいつつ、バイトをする場合も、その金額を全て合計した金額が年収としてみなされるので注意しましょう。
ちなみに、職業訓練中にバイトをする場合は、雇用保険に加入しない働き方であることや、バイトした日や給料を申告するなど様々な条件があります。
失業保険を受給している方は、バイトをすることで失業保険の受給が繰り越されたり、減額されたりすることもあります。
次の記事には、職業訓練を受けながらバイトはできるのか、その注意点について具体的にまとめてあります。
ぜひ、参考にしてみてください!
参考記事:職業訓練を受けながらバイトはできる?条件や注意点もあわせて解説
職業訓練卒業後は扶養の範囲で就職してもいい?
業訓練の対象者は「就職の意思がある人」とされているとお伝えしましたが、「正社員ではなく扶養の範囲での就職を希望してもいいの?」という疑問が浮かんだ方もいると思います。
先に結論からお伝えすると、卒業後に扶養の範囲で就職しても問題ありません。
ただし、週20時間以上で雇用保険に加入するという条件を満たしていないと「未就職」扱いとなります。
ここからは、職業訓練卒業後も扶養の範囲内で就職したい方に向けて、職業訓練の就職の定義や、扶養内で就職するための条件について解説していきます。
家庭の事情や自身の体調を考え、卒業後も扶養内での就職を希望される方はぜひ参考にしてください!
扶養の範囲でも週20時間以上で雇用保険に加入すればOK
職業訓練は、雇用保険適用での早期就職を目指すための公的制度です。
雇用保険に入ることができれば、扶養の範囲でもOKです。
▼(参考)ハローワークの職業訓練で目指す就職の定義
- 職業訓練が修了してから3カ月以内に就職をすること
- 週20時間以上で雇用保険に加入すること
この条件を満たしていれば、アルバイト・パート・派遣社員など雇用形態は問いません。
扶養内での就職であっても「就職」とみなされます。
卒業後に扶養内で働きたい方は、週20時間以上で雇用保険に加入できる条件での就職を目指すことになりますね
扶養の範囲で雇用保険に加入する場合の条件
雇用保険に加入できる条件で、なおかつ扶養の範囲内で就職を目指すときに押さえておくポイントは下記です。
- 週20時間以上働いたときの年収が扶養条件の「年収の壁」を越えないようにする
扶養の種類 | 年収の壁 | 備考 |
税制上の扶養 | 103万 | 税制上の扶養、健康保険・年金上の扶養どち らも入りたい場合は年収103万以上を越えな いようにする |
健康保険・年金上の扶養 | ①106万 | 下記の条件を満たす場合は、年収106万以上で 扶養から外れる ・1週間の労働時間の合計が20時間以上である ・該当する従業員の雇用が2ヶ月以上続くと見 込まれる ・月の賃金が88,000円以上である ・雇用元の会社の従業員が101人以上である ・学生ではない |
②130万 | 上記の106万の壁の条件に当てはまらなかった 人でも、年収130万を越えると扶養から外れる |
表をもとに説明すると、税制上と健康保険・年金上どちらの扶養にも入りたい場合は、年収103万以下におさえる必要があります。
健康保険・年金上の扶養の範囲は、就職先の条件によって年収の壁の上限が変わります。
それぞれ①106万未満、②130万未満のどちらかにおさえる必要があるということです。
少しイメージしにくいと思うので、簡単な事例を紹介します。
【事例A】時給900円で週20時間(1日4時間で週5日)働く場合
時給900円×週20時間×4.3週=月額77,400円
月額77,400円×12か月=年収928,800円
年収928,800円は、年収の壁103万以内なので、税制上・健康保険・年金上の扶養に入ることができます。
【事例B】時給1,100円で週20時間(1日4時間で週5日)で働く場合
時給1,100円×週20時間×4.3週=月額94,600円
月額94,600円×12か月=年収1,135,200円
この場合、就職先の条件が「①106万の壁」に該当する場合は、月額も年収も壁を越えているので扶養から外れます。
就職先の条件が「②130万の壁」に該当する場合は、年収が130万未満なので税制上の扶養からは外れますが、健康保険・年金上の扶養には入れます。
なお、社会保険の加入条件は今後もさらに拡大していく予定で、それにともなって扶養の認定条件も変わっていくかもしれません。
どうしても扶養内で就職したい場合は、企業の採用担当の方にその旨を伝え、必ず条件を確認するようにしましょう。
職業訓練卒業後に就職が決まらなかったらどうなる?
- 卒業後なかなか就職が決まらない
- 就職したけど、週20時間未満で雇用保険に加入しない条件だった
雇用保険適用の早期就職を目的とした職業訓練を受けたにも関わらず、上記のような状況だと「何かペナルティがあるかも」と心配になるかもしれません。
結論から言うと、雇用保険適用の早期就職ができなくてもペナルティはないので安心してください。
ただし、職業訓練を卒業してから3カ月間は、ハローワークと訓練校に自分の就職状況を報告する必要があります。
就職活動はご縁や応募のタイミングもあるため、3カ月以内に就職が決まらないことも十分あり得ます。就職できないからといって過度に心配しなくても大丈夫です。
しかし、なかには条件や職種を絞りすぎてなかなか決まらないという方もいらっしゃるかもしれません。
条件が合わないのに無理に就職する必要はもちろんありませんが、せっかく職業訓練で学んだ知識を活かすなら、少し条件が合わなくても飛び込んでみるのもひとつの手です。
なぜなら、学んだ知識は実践で使ってこそ本当の意味で理解し、自分のスキルとなっていくからです。
実際に仕事をしてみたからこそ気付くこともありますし、目指したい方向性が明確になることもあります。
なかなか就職先を決められない方は、ぜひ勇気を持って一歩踏み出してみることをおすすめします!
FAQよくある質問
職業訓練中に扶養から外れたのに手続きをしなかったらバレる?
扶養の手続きの際に、扶養する人の収入確認書類の提出や、失業保険の給付金額の確認をされるため、基本的にはバレると思っておいた方がいいです。
しかし、保険組合によっては確認書類の提出義務がなく、本人からの自己申告に任せているため、気付かれない場合も発生しているようです。
もしバレた場合は、下記のようなペナルティが発生します。
- その間に病院でかかった医療費(保険者負担の7割分)の返金
- 国保・国民年金の保険料をさかのぼって支払い
- 扶養してくれる人の会社にかなり迷惑をかける
さらに、意図的に申告せずに扶養に入りつづけている場合には、脱税とみなされてペナルティが重くなることもあるようです。
扶養から外れてしまう可能性があるとわかった時点で、必ず申告するようにしましょう。
うっかり途中で気付いた場合には、速やかに扶養から外れる手続きをしましょう。
扶養に入りながら職業訓練受けることは会社にいう必要がある?
失業保険も職業訓練給付金も受け取らない場合は、扶養の条件に影響しないので会社に伝える必要はありません。
失業保険か職業訓練給付金を受け取りながら職業訓練を受講するのであれば、扶養してくれる人の会社に事前に伝えておくことをおすすめします。
さきほどもお伝えしましたが、扶養の認定の判断は保険組合(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合など)によって変わります。
見込み年収を計算して、自分では扶養の範囲の金額に収まったと思っていても、保険組合によっては扶養の範囲を越えていると判断されることもあるかもしれません。
後々のトラブルを防ぐためにも、事前に会社に相談しましょう。
職業訓練中に扶養から外れる場合の手続き方法は?
扶養から外れる場合の手続き方法は下記になります。
1.扶養してくれる人の会社の担当者に伝える
2.扶養を外ずす申請をおこない、必要書類を提出する
3.これまで使っていた健康保険証は会社に返還する
4.14日以内に、居住地の自治体窓口で国民健康保険・国民年金加入の手続きをする
扶養から外れることになるとわかった時点で、速やかに上記の流れで手続きを進めましょう。
さいごに
今回は、職業訓練は扶養に入りながら受講できるのかや、卒業後に扶養内の就職をしてもいいのかについて解説しました。
扶養に入りながら職業訓練を受けたい方が押さえておくべきポイントは下記になります。
・扶養に入りながら職業訓練は受講できる
・失業保険や職業訓練受給金を受け取る予定の人は、その金額によって扶養から外れる可能性がある
・失業保険は日額3,612円以上の受給で扶養から外れる可能性がある
・職業訓練受講給付金は合計金額が年間130万以上で扶養から外れる可能性がある
・受講手当や通所手当なども年収として加算されるので注意する
また、職業訓練卒業後に扶養内で働きたい方が押さえておくべきポイントは下記になります。
・職業訓練卒業後に扶養内で就職しても問題ない
・週20時間以上で雇用保険に加入する条件できればOK
・扶養の範囲で雇用保険に加入する場合は、週20時間以上働いたときの年収金額が、扶養の年収の壁を越えないかに注意する
・職業訓練卒業後3カ月間は、自身の就職状況をハローワークと訓練校に報告しなければならない
扶養に入ることで税負担の軽減や、健康保険証の発行などたくさんのメリットがあります。
失業保険や給付金を受け取る予定の方は、扶養から外れる条件などをしっかりと把握しておきましょう!
一覧へ戻る監修者
平原正浩
ワークキャリア株式会社 求職者支援訓練 本部運営チームリーダー
ワークキャリア株式会社の本部にて、職業訓練校「ジョブトレ」の運営業務全般を統括する。主な業務は訓練制度の把握や訓練運営体制の整備、開校申請など。
ライター
いそべなおこ
ジョブトレ公式ブログライター/事務
ワークキャリア株式会社の求職者支援事業「ジョブトレ」にてSEOメディアの公式ライターを担当。選考面接官・事務業務にも携わる。未経験から事務職を開始した経験から、ジョブトレ事務養成科コースの職業人講話にも登壇している。