職業訓練を受けながらバイトはできる?条件や注意点もあわせて解説
職業訓練は、就職活動に役立つスキルの習得や知識が学べる国の制度です。そんな職業訓練を受けながら、アルバイトをしたいと考えている人も多いのではないでしょうか?
実は、職業訓練を受けながらアルバイトをすることは可能です。生活費が苦しい方や少しでも収入を得たい方にとっては、嬉しいですよね。
しかし、職業訓練を受講しながらのアルバイトにはいくつかの注意点があります。
この記事では、職業訓練を受けながらアルバイトをする際の条件や注意点を紹介します。また、記事の後半ではよくある質問にも回答しています。
働き方によっては職業訓練校が退校になったり、給付金を受け取ることができなくなってしまうので、しっかり読んでいただけると嬉しいです。
ちなみに、最近では完全在宅で受けられるeラーニングの職業訓練があるんです。
スキマ時間で学習できるので、バイトと学習を両立しやすいメリットがあります!
まずは以下の診断チャートで制度の対象かどうかチェックしてみてくださいね。
目次
職業訓練を受けながらアルバイトをする条件
職業訓練を受けながらアルバイトをするためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
- 職業訓練を受ける条件を満たす
- 1日4時間以上、週20時間以上、1ヶ月以上の継続雇用を避ける
職業訓練を受ける条件を満たす
職業訓練は国の制度ですが、受講を希望した全員が受講できるわけではありません。
職業訓練には大きく分けて2つの訓練があります。
- 公的職業訓練:雇用保険(失業保険)を受給している人向け
- 求職者支援訓練:雇用保険(失業保険)を受講できない人向け
※失業保険の正式名称は「雇用保険の基本手当」です。混乱しないよう、この記事では「失業保険」で統一しています。
それぞれの訓練の受講条件を以下の表にまとめました。
公共職業訓練 | ・ハローワークから受講が必要だと判断されること・過去1年以内に退校処分を受けていないこと・前回の公共職業訓練修了日から1年以上経過していること |
求職者支援訓練 | ・ハローワークに求職の申込みをしていること・雇用保険被保険者や失業保険受給資格者でないこと・労働の意思と能力があること・職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めたこと |
各訓練の条件をすべて満たした人が受講できます。また、開講前に行われる選考に通過する必要があります。
職業訓練(ハロートレーニング)の詳しい説明は、以下の記事で行っています。ぜひ参考にしてください!
参考:職業訓練のメリットとデメリットを解説します【体験談あり】
求職者支援訓練はハローワークの受講指示があれば、失業保険を受給している人でも受講できます。ちなみに、株式会社ワークキャリアが開催している職業訓練「ジョブトレ」は求職者支援訓練です。
1日4時間以上、週20時間以上、1ヶ月以上の継続雇用を避ける
職業訓練を受講しながらのアルバイトは基本的に可能です。しかし、必ず「1日4時間以上、週20時間以上、1ヶ月以上の継続雇用を避ける」ように注意しましょう。
「1日4時間以上、週20時間以上、1ヶ月以上の継続雇用」という働き方をすると、ハローワークに働きすぎだと判断されてしまいます。
職業訓練は、転職や失業中の方の就職を支援するためのものです。すでに十分働いている、と判断されてしまうと職業訓練は受講できません。
職業訓練を受けながらアルバイトをする際の注意点
職業訓練を受けながらアルバイトをする際は、以下の点に注意が必要です。
- 雇用保険に入らない働き方をする必要がある
- ハローワークが「就職」とみなした場合はアウトになる
- 受講中にバイト料の支払いがあると書類の提出が必要となる
- 職業訓練を受けている人はバイトをした日や給料を正直に申告すること
一つずつ解説します。
雇用保険に入らない働き方をする必要がある
職業訓練を受けながらアルバイトをする際は、雇用保険に入らない働き方をする必要があります。
職業訓練は、失業中の人が新しい就職先を見つけるための訓練です。そのため、雇用保険に加入している人は受講できません。
雇用保険の加入条件は、以下の2つです。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
上記の条件にあてはまれば、アルバイトやパートなどの雇用形態や事業者と労働者の加入希望の有無にかかわらず加入対象となります。
アルバイトやパート以外にも、派遣社員、契約社員なども「1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の継続雇用」なら雇用保険の加入対象です。
ハローワークが「就職」とみなした場合はアウトになる
ハローワークが「就職」とみなした場合は、職業訓練が受講できなかったり、退校処分となります。雇用保険に加入していなくても「就職している」と判断される場合があるので、注意しましょう。
どのような働き方が「就職」とするのかは、ハローワークの担当者の判断によって異なります。しかし一般的には、雇用保険の加入条件に当てはまるか、というのが判断基準になることが多いようです。
受講中にバイト料の支払いがあると書類の提出が必要となる
「職業訓練の受講開始ギリギリまでアルバイトをしたい」という場合も注意が必要です。
例えば、職業訓練のスタートが4月1日からで、3月31日までアルバイトをしたとします。その場合、アルバイトの給料は4月中に支払われますよね。
上記のように職業訓練受講中、収入がある場合はハローワークに給与明細など書類の提出が必要になります。
また、受講中に収入があることを最初に申告しなかった場合、退校処分になる可能性も。必ず事前にハローワークに申告しましょう。
職業訓練を受けている人はバイトをした日や給料を正直に申告すること
職業訓練の受講中にアルバイトなど働いた日があれば、日数や給料を正直に申告しましょう。失業保険を受給している場合、正直に申告していないと不正受給とみなされる場合があります。
不正受給と判断されると、以下のような処分が課せられる可能性があります。
- 不正行為のあった日以降の給付停止
- 不正受給した金額の全額を返還する
- 不正行為により受け取った額の2倍の納付が命じられる
- 返還や納付に応じない場合、財産差押えなどの強制処分が行われる
不正受給をしないためにも、自分で判断するのではなく、ハローワークで相談するようにしましょう。
「なるべく多く給付を受けたい」という気持ちはわかりますが、不正受給を行うと3倍ほどの金額を支払うことになる可能性もあります……。アルバイトをしている方は必ずハローワークに申告してくださいね!
失業保険を受給しながらアルバイトをして職業訓練を受ける際の注意点
「職業訓練を受けながらアルバイトをしたい、なおかつ失業保険を受給したい」という場合も注意が必要です。
- 1日4時間以上バイトした日は失業保険が繰越される
- 1日4時間未満のバイトでも受講できるが減額される
- 不正受給を行うと罰せられる可能性がある
それぞれの注意点を説明しますね。
1日4時間以上バイトした日は失業保険が繰越される
1日4時間以上バイトした日がある場合は、その日の失業保険は支払われず繰越になります。繰越となった失業保険は先送りになるだけで、受給できる失業保険は減額されません。
ただし、受給期間に注意が必要です。失業保険には受給期間というものがあり、受給期間をすぎてしまうと繰越分の失業保険は受給できなくなります。
受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。また短期雇用特例被保険者は、離職日の翌日から6ヶ月間です。
繰越をしすぎてしまうと失業保険を満額受け取れなくなってしまうかもしれません。受給期間がいつまでか、こまめに確認しましょう!
1日4時間未満のバイトでも受講できるが減額される可能性も(計算方法あり)
職業訓練を受講しながらアルバイトをして、失業保険を満額もらいたい場合は1日4時間未満のアルバイトをするのがよいでしょう。しかし、1日4時間未満のアルバイトでも給与が一定の額を超えると失業保険が減額される可能性があります。
収入と失業保険の合計金額が賃金日額の8割をこえる場合、超えた分の失業保険が減額されます。また、収入だけで賃金日額の8割を超えてしまうと、失業保険は受給できません。
引用:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更~8月1日(月)から実施~」
どれだけ減額されるのか、実際に計算してみましょう。
【減額される分の計算方法】
例えば、失業保険(基本手当日額)が5,000円、賃金日額が6,000円、1日分アルバイトの収入が2,000円(控除額:1,310円を引いた金額)の場合……
賃金日額の8割:6,000円×80%=4,800円
5,000円(基本手当日額)+2,000円(バイト収入)- 4,800円(賃金日額の8割)= 2,200円
上記の場合、基本手当日額が2,200円減額されることになります。
賃金日額とは、離職日の直前6ヶ月間に支払われた賃金の合計を180で割った金額の50〜80%(60歳~64歳については45%~80%)の金額のこと。失業保険の受給申請を行った際に設定されます。「賃金日額」や「失業給付の日額(基本手当日額)」は、雇用保険受給資格者証で確認できます!
職業訓練で受給できる手当や給付金とは?
職業訓練受講中には、失業保険以外にも受け取れる手当や給付金があります。
- 公共職業訓練:技能習得手当(受講手当・通所手当)
- 就職者支援訓練:職業訓練受講給付金、通所手当
職業訓練で受け取れる給付金については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
参考:職業訓練の給付金がもらえる資格と条件 | 審査に落ちるパターンとは
公共職業訓練の場合は「技能習得手当」
技能習得手当とは、公共職業訓練の受講時に受け取れる手当です。
技能習得手当には「受講手当」と「通所手当」の2種類があり、受講条件によってどちらも受け取れます。
- 受講手当:公共職業訓練等を受けた日に応じて日額500円支給。月額最大20,000円。
- 通所手当:職業訓練校に通う際の交通費。月額最大42,500円。
技能習得手当の受給手続きは、ハローワークで行います。職業訓練を受講することが決まり次第、ハローワークにその旨を申告しましょう。
公共職業訓練に受講している人は、失業保険も受給できます。つまり、失業保険+受講手当+通所手当が受け取れるということですね!
求職者支援訓練の場合は「職業訓練受講給付金」
求職者支援訓練を受講する場合、条件を満たすことで「職業訓練受講給付金」が受給できます。
職業訓練受講給付金の受給条件は、以下の7つです。
- 本人の収入が月8万円以下
- 世帯全体の収入が月25万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
- 全ての訓練実施日に出席している
- 世帯の中に給付金を受給して訓練を受けている人がいない
- 過去3年以内に、不正行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない
上記条件をすべて満たしている場合は、月額10万円の職業訓練受講給付金が受け取れる可能性があります。(受給できるかどうかの最終判断は、ハローワークの担当者が行います)
また、求職者支援訓練を受講している場合も月額最大42,500円の通所手当が受け取ることができます。
職業訓練を受けながらできる4つのアルバイト・働き方
条件はあるものの、職業訓練を受けながらアルバイトすることは可能です。
以下の4つは、職業訓練を受けながらできるアルバイトだと言えるでしょう。
- 雇用保険に加入しない条件のバイト
- 単発のバイト
- 内職・手伝い
- フリマアプリを使って不用品を売る
ただし、給料の金額によっては失業保険が受給できなかったり減額されたりすることがあるので注意しましょう。
また、アルバイトをした際は必ずハローワークで申告してくださいね!
雇用保険に加入しない条件のバイト
雇用保険に加入しない条件のバイトなら、職業訓練を受けながら働くことができます。
1ヶ月未満の短期のアルバイトなら、雇用保険に加入しません。1ヶ月未満かつ週20時間以内、そして1日4時間未満のアルバイトなら失業保険を受け取れます。
求職サイトで「雇用保険未加入」という条件でアルバイトを探してもよいでしょう。
単発のバイト
単発のバイトなら、自分の好きなタイミングで働くことができます。また、継続雇用ではないので雇用保険の加入条件にも当てはまりません。
履歴書や面接が不要の求人が多いので、働きたい時にすぐ働けるのはうれしいですよね。生活費が厳しい際などにおすすめです。
給与によって失業保険が減額される場合がありますが、職業訓練の受講には問題ありません。
内職・手伝い
職業訓練を受けながら働く方法に「内職・手伝い」があります。
雇用保険では、主に以下の状態かつ1日の労働時間が4時間未満の場合が「内職・手伝い」とみなされます。
- 事業主に雇用された場合
- 自営業の準備
- 自営業を営むこと
- 商業・農業等の家業に従事
- 請負・ 委任による労務提供
- 在宅の内職
- ボランティア活動をした場合
手伝いやボランティア活動など収入がない場合もハローワークへの申告は必要ですが、失業保険に影響はありません。
フリマアプリを使って不用品を売る
フリマアプリを使った不用品の販売も収入を得る一つの方法です。
自分の持っている不用品を売って得た収入は、申告する必要はありません。雇用保険の加入条件に当てはまらず、失業保険の減額なども行われない上、一時的な収入を得ることができます。
ただし、サイト内で自分のショップを開設したり、せどり、ハンドメイド作品の販売などは労働と見なされるようです。このような場合は、ハローワークに必ず申告しましょう。
フリマアプリを使った不用品販売は、正確にはアルバイトではありません(笑)しかし、収入を少しでも得たいと考えているのなら、おすすめです!
職業訓練の受講中は学習に集中した方が良い
職業訓練を受けながら、アルバイトをすることは可能です。
しかし時間や収入に制限があり、超えてしまうと退校処分になる場合もあります。また、失業保険を受け取っている場合は減額される可能性も。注意すべき点はたくさんあります。
可能なら、バイトはせずに手当や給付金を受給して、職業訓練に集中した方が良いでしょう。職業訓練の受講中は、条件を満たせば手当や給付金が受け取れるので、生活費に充てることもできますよ。
「時間あるしアルバイトしようかな」と考えているなら、職業訓練中のアルバイトはおすすめしません。働き方に気をつけながらバイトをするより、少しでも早くたくさんの知識を職業訓練で身につけて、就職活動をした方が最終的にオトクかもしれませんよ!
職業訓練中のバイトについてよくある質問
最後に、職業訓練を受けながらアルバイトをする際のよくある質問にお答えします。
職業訓練校にアルバイトをしていることはバレますか?
職業訓練校では受講生の収入に関する調査は行われません。そのため、職業訓練校にアルバイトがバレる可能性は低いと言えるでしょう。
ただし、アルバイト先経由でハローワークにバレる可能性はあります。ハローワークにアルバイトがバレるのは、以下のような理由があります。
- アルバイト先で知らないうちに雇用保険に加入していてバレる
- アルバイトの給与が振り込まれた際の税金からバレる
- 第三者からの密告などでバレる
ハローワークにアルバイトがバレると職業訓練の退校処分だけでなく、失業保険や手当、給付金の受給があれば不正受給とみなされます。
不正受給になると重いペナルティが課せられます。アルバイトはちゃんと申告しましょう!
アルバイトで雇用保険に加入した際はどうすればいい?
働く時間が増えるなどで雇用保険に加入した場合、職業訓練はその時点で受けられなくなります。
雇用保険に加入した旨をハローワークと職業訓練校に必ず申告しましょう。退校日などを調整し、書類を提出する必要があります。
雇用保険に加入したにもかかわらず申告がされていないと、不正受給と判断される場合があるので注意が必要です。
不正受給にならないためにも、アルバイト先に「職業訓練を受けていることは共有した方がが良いですね。併せて「雇用保険に加入するときは教えてください」と伝えておくと安心ですよ!
ハローワークが就職とみなした場合はどうなる?
「1年以上の雇用が見込まれ、週20時間以上の労働」は就職とみなされます。就職と見なされると、職業訓練の受講や失業保険の受給は停止となります。
どの時点で停止となるかは、アルバイトの働き方や就職と判断されたタイミングで異なるようです。
フリーランスとして得た収入はアルバイトになりますか?
フリーランスとして得た収入はアルバイトにはなりません。ただしフリーランスや副業で得た収入や労働時間は、ハローワークで申告する必要があります。
また、開業届を出している状態で「失業している状態」ではないので、職業訓練を受けること自体が難しいでしょう。
開業届を提出しなくても、開業の準備を始めた段階で「就職」と判断される場合が多いです。ただハローワークでは開業準備のタイミングはわからないので、本人の申告した日で失業保険の支給停止や職業訓練の受講資格がなくなるようです。
週20時間以内のバイトであれば31日以上働いてもいいですか?
雇用保険の加入条件は「週20時間以内かつ31日以上の継続雇用」なので、週20時間いないのバイトであれば31日以上働いても問題はないでしょう。
ただし、ハローワークの担当者が「就職」とみなしたら、その時点で失業保険の受給や職業訓練の受講は停止してしまいます。
「大丈夫だと思っていたのに、就職と判断された……」とならないように、事前にハローワークでアルバイトの勤務日数などに問題がないかを確認すると良いでしょう。
まとめ:職業訓練を受けながらのバイトは可能できる
職業訓練を受けながら、アルバイトすることは可能です。生活が苦しい、などの理由がある方にとっては嬉しいですよね。
ただし、収入や勤務日数、勤務時間などに制限があるので注意しましょう。また、失業保険や手当、給付金などの受給を考えている場合は、それらの支給条件にも配慮する必要があります。
条件を守りながらアルバイトを続けるか、失業給付や給付金をもらいながら職業訓練に集中して取り組むか、どちらが自分にとってメリットがあるのかをしっかり考えることが大切です。
ワークキャリアでは、オンライン完結型のeラーニングコースを開講しています。
eラーニングコースの雰囲気が知りたい場合、公式LINEで配信中の体験動画を見てみてくださいね。
一覧へ戻る監修者
平原正浩
ワークキャリア株式会社 求職者支援訓練 本部運営チームリーダー
ワークキャリア株式会社の本部にて、職業訓練校「ジョブトレ」の運営業務全般を統括する。主な業務は訓練制度の把握や訓練運営体制の整備、開校申請など。
ライター
古賀瞳
ジョブトレ公式ブログライター/事務
ワークキャリア株式会社の求職者支援事業「ジョブトレ」にてSEOメディアの公式ライターを担当。選考面接官・事務業務にも携わる。企業において、4年半の人事労務担当としての実務経験あり。