失業保険は手取りではなく総支給額から計算する|計算方法を3ステップで解説とまとめ
生活の不安を解消して求職活動に専念するために、失業保険がいくらもらえるのか把握したい人も多いでしょう。
失業保険は「在職時の手取り給与」ではなく「賞与を除いた総支給額」をもとに計算されています。
本記事では、具体的にどのように失業保険の支給額を計算するのかをわかりやすく解説していきます。
実際に失業保険がいくらもらえるのか把握したい人は、ぜひ参考にして計算してみてください!
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目次
失業保険は手取りではなく総支給額から計算する
自分がいくら失業保険をもらえるか計算するには、在職時の給与の手取りではなく、賞与を除いた総支給額(税金や社会保険料は天引きされる前の額)をもとにします。
具体的に失業保険の受給額を求める計算式は、以下のとおりです。
基本手当日額=賃金日額×給付率(50〜80%)
失業保険の受給総額=基本手当日額×所定給付日数
「基本手当日額」とは、1日あたりに受給できる失業保険の支給額のことです。
「賃金日額」は在職時にもらっていた給与6カ月分の平均額を、1日あたりとして算出した金額です。
また「給付率」や「所定給付日数」は年齢や離職理由によって変動します。
すでに失業保険を受給中の方は「雇用保険受給資格者証」を見ると、上記の計算式にあてはめて失業保険の支給額を計算できます。
失業保険を計算する3ステップ
失業保険を計算する上で、1日あたりの支給額である「基本手当日額」がわかると毎月の支給額や支給総額は簡単に求められます。
具体的には、以下の3つのステップで失業保険を計算しましょう。
- 賃金日額を計算する
- 基本手当日額を計算する
- 給付日数を計算する
それぞれの計算方法がわかりやすいように、順番に解説していきます。
賃金日額を計算する
基本手当日額を計算するときのもとになる賃金日額は、以下の計算式で求められます。
賃金日額=退職前6カ月間の給与総額÷180日間(6カ月×30日間)
たとえば、退職前に毎月25万円の給与を得ていたとすると、賃金日額は以下のようになります。
賃金日額=25万円×6カ月間÷180日間=8,333円
賃金日額は、在職時の「手取り給与」ではなく「賞与を除いた総支給額」をもとに計算してください。
また、賃金日額は上限額と下限額が設定されています。詳しくは以下の資料から確認しておきましょう。
基本手当日額を計算する
失業保険の計算のもとになる基本手当日額は、以下の計算式で求められます。
基本手当日額=賃金日額×給付率(50〜80%)
給付率については年齢や賃金日額によって変動するため厚生労働省の資料をもとに計算してください。
たとえば、30歳以上45歳未満で賃金日額が4,000円の場合は、以下のような計算式になります。
基本手当日額=4,000円×80%=3,200円
基本手当日額をもとにして、給付日数から「毎月の失業保険額」や「失業保険の支給総額」を簡単に計算できます。
また、基本手当日額には上限額と下限額が設定されています。詳しくは以下の資料から確認してください。
給付日数を計算する
失業保険の総額に関わる所定給付日数は、退職した理由と雇用保険の加入期間によって定められます。
会社都合退職と自己都合退職の給付日数を、それぞれ見ていきましょう。
会社都合退職の場合
雇用保険の加入期間 | |||||
年齢 | 1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30歳以上 35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上 45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
45歳以上 60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上 65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
会社都合退職については、雇用保険の加入期間によって「90日〜330日」の給付日数が付与されます。
たとえば、雇用保険の加入期間が8年で30歳のときに会社都合で退職した場合は、120日分の失業保険が支給されるというわけです。
自己都合退職の場合
雇用保険の加入期間 | |||||
年齢 | 1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 |
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
自己都合退職については、雇用保険の加入期間によって「90日〜150日」の給付日数が付与されます。
たとえば、雇用保険の加入期間が8年のときに自己都合で退職した場合は、90日分の失業保険が支給されるというわけです。
失業保険を受給するまでの流れ
失業保険を受給するためには、住居を管轄するハローワークに離職票を提出し、求職申込をおこないます。
具体的に失業保険を受給するまでの流れは、以下のとおりです。
- ハローワークで求職申込
- 7日間の待期期間
- 自己都合退職なら2カ月間の給付制限
- 雇用保険受給説明会
- 失業の認定(初回認定日)
- 失業保険の受給開始
初めて失業保険を受給する人は、全体の流れもイメージできるので、ぜひ参考にしてくださいね。
1.ハローワークで求職申込
失業保険を受給するには、住居を管轄するハローワークに離職票を提出し、求職申込をおこないます。
手続きの際に必要になる持ち物は、以下のとおりです。
- 雇用保険者離職票(1・2)
- 雇用保険被保険証
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード・通知カード・個人番号の記載がある住民票)
- 身元確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・官公署が発行した身分証明証など)
- 写真(たて3cm×よこ2.5cmの正面上半身のもの2枚)
- 本人名義の普通預金通帳またはキャッシュカード
失業保険の手続きの受付は、月曜日〜金曜日(祝日・年末年始を除く)の8時30分〜17時15分です。
求職申込には一定の時間がかかるため、時間に余裕をもって手続きしましょう。
2.7日間の待期期間
求職申込で離職票を提出すると、手続きした日も含めて7日間の待期期間が始まります。
待期期間とは、求職者が本当に失業状態で、就職する意思があるのかをハローワークが判断する期間です。
離職理由に関係なく、失業保険の受給を始めるすべての人が対象になります。
さらに、自己都合退職者については2〜3カ月間の給付制限も追加されます。
3.自己都合退職なら2カ月間の給付制限
自己都合で退職すると、待期期間とは別に(原則として)2カ月間の給付制限があります。
5年以内に自己都合退職を3回以上繰り返していると、給付制限は3カ月間に延長されるので注意してください。
給付制限中でも「失業の認定」や「雇用保険受給説明会」を受けるために、ハローワークへ行く必要があります。
ただし、職業訓練を受講すると、給付制限を解除して失業保険の受給を早めることも可能です。
職業訓練を受講中は、ハローワークに認められると、失業保険の給付が訓練終了まで延長されたり、受講手当や通所手当が支給されたりするメリットがあります。
実際にオンラインで自宅から職業訓練を受講できる「ジョブトレ」にも、失業保険をもらいながらスキルアップしている人が多数在籍中です。
職業訓練について詳しく知りたい方は「職業訓練を受けるにはどうしたらいい?|職業訓練校が解説します」をご覧ください。
4.雇用保険受給説明会
雇用保険受給説明会は、待期期間を満了した1〜2週間後に指定された日にハローワークで参加します。
求職申込をしたときに配布される「雇用保険受給資格者のしおり」と「筆記用具」を持参しましょう。
説明会の内容は、以下のとおりです。
- 失業保険の受給について重要な事項の説明
- 雇用保険受給資格者証・失業認定申告書の配布
- 第一回目の「失業認定日」のお知らせ
管轄のハローワークによっては、オンラインで開催している場合もあります。
オンラインで開催しているかについては、住居を管轄するハローワークに確認してみてください。
5.失業の認定(初回認定日)
初回認定日は、求職申込した日からおよそ1カ月後にハローワークによって指定されます。
失業の認定とは、失業保険を受給するために失業状態のまま求職活動をおこなっているとハローワークから認定されることです。
失業を認定されるためには「失業認定申告書」へ求職活動の実績を記入します。
ハローワークに認められる求職活動の例は、以下のとおりです。
- ハローワークでの職業相談
- ハローワークのセミナーに参加
- 求人サイトから企業へ応募
- 民間企業の就職説明会に参加
また、厚生労働省ホームページのハローワーク就職支援セミナー「動画配信サービス」にて動画を視聴し、修了テストを受験後に修了証が発行されると活動実績にカウントされます。
初回認定日では、待機満了日の翌日から初回認定日の前日までに求職活動した実績が1回以上必要です。
求職活動の実績が足りない場合は、失業保険の支給が先送りされてしまうので注意してください。
6.失業保険の受給開始
失業保険の給付は「失業の認定」をおこなった日から、通常5営業日で指定した金融機関の口座に振り込まれます。
その後は、所定給付日数を限度として、再就職が決まるまで「失業の認定」と「受給」を繰り返して求職活動に専念していく流れです。
基本的に失業保険は、4週間ごとに「失業の認定」をおこなうため28日分が振り込まれます。
たとえば、所定給付日数が90日で給付制限がない場合は、以下のような流れで受給していくイメージです。
日付 | 失業保険の受給に関するイベント | 失業保険の受給有無 |
10月12日 | 受給資格決定日・待期期間開始 | 受給なし |
10月18日 | 待期期間満了 | 受給なし |
11月9日 | 初回認定日 | 28日ー待期期間7日=21日分の支給有 |
12月7日 | 2回目の認定日 | 28日分の支給有 |
1月4日 | 3回目の認定日 | 28日分の支給有 |
2月1日 | 最終認定日 | 残りの給付日数13日分の支給有 |
初回の振り込みに関しては、待機期間や給付制限の日数が差し引かれるため、通常受給できる28日分よりも受給額が少なくなります。
また、実際の支給スケジュールは前後する可能性もあるため、詳しい支給スケジュールについては管轄のハローワークで確認してください。
失業保険の受給を開始する3つの注意点
失業保険の受給中は、注意点を守らないと「支給先送り」や「減額」になる可能性があります。
特に気をつけたい注意点は、以下の3つです。
- 離職理由に関係なく7日間の待期期間がある
- 再就職するタイミングによっては受給できない
- 失業保険の受給中はアルバイトに制限がある
失業保険の減額を避けたい人は、順番に詳しく見ていきましょう。
離職理由に関係なく7日間の待期期間がある
待機期間中の7日間にわずかでも働いてしまうと、待機期間が延長されてしまいます。
具体的に働いたときに待機期間を数える方法は、以下のとおりです。
働いた日数 | 待期期間 |
アルバイトしていない | 受給資格決定日を含めた7日間 |
1日1時間だけ働いた | 働いた翌日からさらに7日間 |
待期期間は、通算した7日間で求職者が本当に失業状態にあるのかハローワークが判断する期間です。
1日でも働くと再度7日間の待機期間が必要になり、失業保険の給付が遅れてしまうので注意してください。
再就職するタイミングによっては受給できない
失業保険は、再就職するタイミングによっては受給できません。
失業保険は、失業状態にある人が再就職するための支援として給付されます。
以下のように失業保険の受給資格を得る前に就職先が決まっている人は、失業保険を受給できないのです。
- 失業保険の受給資格を得る前から決まっていた内定先に就職した場合
- 入社日が待期期間と被って就職した場合
ただし、失業保険の受給中に就職先が決まった人については、就職日の前日まで給付を受けられます。
所定給付日数が3分の1以上ある場合は「再就職手当」も受給できるので、就職先が決まったときには速やかにハローワークに報告しましょう。
失業保険の受給中はアルバイトに制限がある
失業保険の受給中は「雇用保険の加入条件」を満たさない範囲でアルバイトやパートなどの仕事が認められます。
雇用保険の加入条件とは、以下のとおりです。
- 1週間の所定労働時間が20時間未満であること
- 31日未満の雇用であること
失業保険はあくまで、失業状態である人が生活に困らずに求職活動ができるように支給される手当です。
そのため、雇用保険の加入条件を満たす仕事は「就職」とみなされ、失業保険の対象から外れてしまうのです。
また、1日の労働時間によっても、以下のように支給の「先送り」や「減額」になる可能性があります。
- 4時間以上働いた日はその日の失業保険の支給分が先送りになる
- 4時間未満働いた日はその日の失業保険の支給分が減額される場合がある
働いた内容は、ボランティア活動も含めて失業の認定日に「失業認定申告書」で申告しなくてはいけません。
働いた内容を正しく申告しないと、不正受給になる可能性があるため、申告は正確におこないましょう。
失業保険の受給中は職業訓練でスキルアップできる
ハローワークで受講を認められると、失業保険を受給しながら職業訓練に通うことができます。
職業訓練とは、希望する仕事に就職するために必要なスキルや知識が取得できる公的制度です。
基本的に受講料は無料で、失業中の生活への負担も少なくスキルアップできるという特徴があります。
失業保険の受給中に職業訓練を受けるメリット
失業保険中に職業訓練を受けるメリットは、以下のとおりです。
- 無料で知識を得られる
- 給付金を受け取れる
- 再就職のための就職支援を受けられる
- 失業給付を早めに受け取れる
- 失業給付金を延長給付されることがある
- ともに学ぶ仲間ができる
無料で就職に必要なスキルアップができるだけでなく、自己都合退職者の給付制限が解除されたり、ハローワークに認められると給付が延長されたりします。
また「ジョブトレ」のように在宅でも受講できるオンライン型の職業訓練も増加しているため、子育て中の主婦の方や地方在住の方でも受講しやすい環境が整っているのです。
より詳しく職業訓練についてのメリット・デメリットが知りたい方は「職業訓練は転職に不利?就職につなげる方法やメリットデメリットを解説」も参考にしてください。
職業訓練を申し込む手順
職業訓練に申し込む手順は、以下のとおりです。
- ハローワークで求職申込をする
- ハローワークの窓口で職業相談をする
- 受講申込書を作成・提出する
- 職業訓練校の選考試験を受ける
- 職業訓練校から合否連絡が来る
- 合格後、ハローワークで就職支援計画書の交付を受ける
職業訓練を受講するには、希望する仕事と職業訓練をハローワークの担当者に伝えて「受講申込書」をもらう必要があります。
ハローワークの担当者に「職業訓練は必要ない」と判断されると希望の職業訓練は受講できません。
仕事の志望理由や、なぜ職業訓練が必要なのかを具体的に説明できるように準備しておきましょう。
職業訓練の申し込みについて、より詳しく知りたい方は「職業訓練の申し込みの流れ8STEP|申込書の書き方や必要なものも解説」もご覧ください。
FAQよくある質問
失業保険の計算には前職の定期代や残業代は含まれる?
定期代や残業代は、賃金日額の計算に含まれます。
一方で、ボーナスや退職金などは計算に含みません。
より詳しい分類は、以下の資料で確認できます。
65歳以上が失業保険を計算する方法はある?
65歳以上の方は、失業保険のかわりに高年齢求職者給付金を受給できます。
高年齢求職者給付金の受給資格を得るには、失業保険と同じようにハローワークに求職申込をしましょう。
7日間の待期期間を満了して、失業の認定日に失業が認められると一括で支給されます。
より詳しく内容を知りたい方は、以下の資料を参考にしてください。
退職時に傷病手当をもらっている場合の失業保険の計算はどうなる?
退職したときに傷病手当をもらっている場合は、同時に失業保険を受給できないため、療養が終わって働けるようになってから切り替えてください。
失業保険の計算には傷病手当は含まれないので、在職時の給与で賃金日額が算出されます。
退職してから就労するまで30日以上かかる場合は、失業保険をもらい損ねないように受給期間の延長手続きをおこないましょう。
受給期間延長の申請については、以下のページから確認できます。
さいごに
失業保険の計算方法について解説してきました。
失業保険の支給額を知るには「在職時の手取り給与」ではなく「賞与を除いた総支給額」をもとに計算します。
簡単に計算したい人は、失業保険の受給資格を得ると配布される「雇用保険受給資格者証」で「基本手当日額」と「所定給付日数」を確認して計算してみましょう。
また、失業保険の受給中は、職業訓練を受けて志望する仕事に役立つスキルの取得も可能です。
ハローワークに受講を認めてもらえると、給付制限が解除されたり、失業保険の給付が延長されたりする場合もあります。
失業保険をもらいながら無料で受けられる職業訓練に興味がある方は、下のリンクから詳細をチェックしてみてくださいね!
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一覧へ戻る監修者
平原正浩
ワークキャリア株式会社 求職者支援訓練 本部運営チームリーダー
ワークキャリア株式会社の本部にて、職業訓練校「ジョブトレ」の運営業務全般を統括する。主な業務は訓練制度の把握や訓練運営体制の整備、開校申請など。
ライター
いしい ゆうすけ
Webライター
ワークキャリア株式会社の求職者支援訓練事業「ジョブトレ」にて、SEOメディアの執筆を担当。過去に販売職から営業職への転職経験あり。自分自身が悩みながら行動した経験をもとに、読者の問題解決につながる記事を目指して執筆している。