失業保険をもらいながらアルバイト・パートで働ける|減額や先送りになる注意点も解説
「失業保険をもらいながら働いても大丈夫?」「給付制限があるから生活費を稼ぎたい」と悩んでいる人も多いはずです。
失業保険の受給中は、制限を守りながらアルバイトやパートで働くことができます。
ただし、ちゃんと理解しておかないと「支給の先送り」や「減額」になることもあるんです。
本記事では、失業保険をもらいながら問題なく働けるように、失業保険の受給中に働く条件や注意点を解説していきます。
失業保険をもらいながら働きたい人は、ぜひ参考にしてください!
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目次
失業保険とは
失業保険とは、雇用保険の被保険者が失業中でも安心して再就職できるように、支給される手当のことです。
※正確には「雇用保険の基本手当」と言いますが、本記事では「失業手当」と統一して説明します。
給付される日数は、離職したときの年齢や雇用保険の加入期間、離職理由によって「90日〜360日」の間で決められます。
離職理由と給付日数の目安は、以下の表を参考にしてください。
離職理由 | 給付日数 | |
---|---|---|
会社都合 | 特定受給資格者 | 90日〜240日 |
自己都合 | 一般の離職者 | 90日〜150日 |
特定理由離職者 | 90日〜240日 | |
就職困難者 | 150日〜360日 |
「特定受給者」とは、解雇や早期退職の募集など会社都合で退職した人のことです。
一方で、やむを得ない正当な理由による自己都合退職は「特定理由離職者」と認定されて、一般の離職者よりも手厚い給付日数になる場合があります。
また、障害者手帳や医師の意見書がある場合は「就職困難者」に分類され、他の離職者に比べて給付日数は多くなる場合もあります。
ただし、離職理由の決定は自分ではなく、ハローワークが判断することは考慮しておきましょう。
さらに詳しく知りたい人は、以下の資料も参考にしてください。
参考:基本手当の所定給付日数
参考: 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
失業保険を受給するまでの流れ
失業手当を受給するには、失業状態を証明するために「7日間の待期期間」を必ず過ごさなくてはいけません。
さらに、一般の離職者については、再就職する意欲があるか判断するために「2〜3カ月間の給付制限」も設けられています。
失業手当を受給する流れが具体的にわかるように、離職理由ごとに解説していきます。
会社都合退職の場合
会社都合退職者と自己都合退職者の「特定理由離職者」は7日間の待期期間を満了すると、失業手当の受給が始まります。
失業手当を受給するまでの具体的な流れは、以下のとおりです。
- ハローワークに離職票の提出・求職申込
- 7日間の待期期間
- 雇用保険受給説明会
- 失業認定日(初回認定日)
- 支給終了まで4週間ごとに認定日を繰り返す
「失業の認定日」とは、失業状態にある人が失業手当を受給するために、ハローワークから求職活動をおこなっていると認定してもらう日のことです。
認定してもらうには「失業認定申告書」で求職活動とアルバイトやパートの労働も申告しなくてはなりません。
また、求職活動はハローワークが指定する、以下のような活動が2回以上必要です。
- 求人への応募
- ハローワークの職業相談・セミナー
- 認可・届出のある民間事業者の職業紹介・セミナー
- 再就職に必要となる資格試験
厚生労働省のホームページからハローワーク就職支援セミナー「動画配信サービス」を視聴して、修了テストで修了証を獲得しても求職実績にカウントされます。
自己都合退職の場合
一般の自己都合退職者の場合は、7日間の待期期間に加えて、失業手当の給付制限が2〜3カ月間あります。
失業手当を受給するまでの流れは、以下のとおりです。
- ハローワークに離職票の提出・求職申込
- 7日間の待期期間
- 2〜3カ月間の給付制限
- 雇用保険受給説明会
- 失業認定日(初回認定日)
- 給付制限後に2回目の失業認定日
- 支給終了まで4週間ごとに認定日を繰り返す
給付制限は、5年以内に自己都合退職を3回以上繰り返していると3カ月間に延長となります。
「雇用保険受給説明会」と「失業の初回認定日」は給付制限中にハローワークでおこなわれます。
給付制限中でも「失業の認定」には「失業認定申告書」による求職活動や労働の申告が必要です。
給付制限は職業訓練の受講で短縮できる
自己都合退職の場合は、職業訓練を受講すると訓練開始日の前日に給付制限が解除されます。
職業訓練とは、再就職するにあたってハローワークが必要と判断したときに、無料で知識や技能を習得できる制度です。
失業手当の所定給付日数が終了したあとでも、ハローワークに認められると訓練終了まで支給が延長されたり、受講手当や通所手当が支給されるメリットがあります。
実際にeラーニングで自宅から職業訓練を受講できる「ジョブトレ」受講者の中にも、失業手当をもらいながらスキルアップされている方が多数在籍しています。
職業訓練に興味がある方は「職業訓練の申し込みの流れ8STEP|申込書の書き方や必要なものも解説」で申込方法を確認してみましょう。
失業保険をもらいながらアルバイト・パートで働く3つの条件
失業手当はあくまで「失業状態にある人への就職支援」として給付されるため、アルバイト・パートなどの労働は制限されます。
特に気をつけたい条件は、以下の3つです。
- 週20時間未満・31日未満の雇用であること
- 失業の認定日に内容を申告すること
- 日給と基本手当日額の合計が前職の賃金日額の80%以内であること
失業手当の給付を受けながら働くために、それぞれ詳しく解説していきます。
週20時間未満・31日未満の雇用であること
失業手当をもらいながら働くためには、雇用保険に加入しないように注意が必要です。
雇用保険に加入する必要がない労働条件は、以下のようになります。
- 週20時間未満の労働
- 31日未満の雇用見込み
アルバイトやパートであっても、雇用保険に加入してしまうと「就職」とみなされるのです。
また、31日未満の雇用でも以下のケースは雇用保険の加入対象になります。
- 雇用契約に更新する場合がある旨の規定があり、31日未満での雇い止めが明記がないとき
- 雇用契約に更新規定はないが、同様の雇用契約で31日以上雇用された労働者がいたとき
自分が雇用保険の対象になるかわからないときは、働く前にハローワークの担当者に相談してみましょう。
失業の認定日に内容を申告すること
失業手当の受給中に働いた内容は、失業の認定日にハローワークへ申告しなくてはいけません。
働き始めてすぐに申告する必要はなく、4週間ごとに迎える失業の認定日に「失業認定申告書」を使って申告してください。
記入する具体例は、以下のとおりです。
- 収入のあった日付や金額
- 1日4時間以上の労働は「就職・就労」に分類
- 1日4時間未満の労働は「内職・手伝い」に分類
収入がないボランティア活動の申告も必要になるので、申告漏れがないように注意しましょう。
より詳しい記入方法は、以下の資料も参考にしてください。
参考:失業認定申告書の記入の仕方について~失業認定期間中にお仕事をした場合~
日給と基本手当日額の合計が前職の賃金日額の80%以内であること
失業手当をもらいながら働くためには「日給と基本手当日額の合計」を「前職の賃金日額の80%以内」におさえる必要があります。
用語 | 用語解説 | 算出方法 |
---|---|---|
基本手当日額 | 1日あたりの失業手当の支給額 | 賃金日額×45〜80% (年齢や賃金日額で異なる) |
賃金日額 | 1日あたりの退職前の給与平均 | 退職前6カ月の給与÷180 |
基本手当日額と賃金日額は、失業手当の手続きの際にもらう雇用保険受給資格者証で確認できます。
さらに詳しく知りたい方は、以下の資料をご覧ください。
失業保険をもらいながらアルバイト・パートで働く4つの注意点
失業手当の受給中は、以下の4つの注意点を考慮しておかないと「支給の先送り」や「減額」の対象になります。
- 待期期間に働くと待期が延長される
- 1日4時間以上の労働は失業手当の支給先送りになる
- 1日4時間未満の労働は失業手当の減額になる
- 申告しないと失業手当の返還を求められる場合がある
もらえるはずの失業手当が減額されないように、詳しく見ていきましょう。
待期期間に働くと待期が延長される
待期期間中の7日間(土日祝含む)にわずかでも働いてしまうと、待期期間が延長されます。
働いてしまったときの待期期間は、以下のとおりです。
働いた日数 | 待期期間 |
---|---|
働いていない | 受給資格決定日を含めた7日間 |
1日だけ1時間働いた | 働いた翌日からさらに7日間 |
1日でも働いてしまうと、働いた翌日から再度7日間の待期期間が始まります。
ハローワークは、待期期間をとおして「本当に失業して現在も就労していないのか」を調査しているからです。
単発のアルバイトや短時間の手伝いも「就労」とみなされるので注意してください。
1日4時間以上の労働は失業保険の支給先送りになる
1日4時間以上の労働をおこなうと「就労した」とみなされて、失業手当の支給は先送りされます。
「支給が先送りされる」というのは、もともと付与された所定給付日数の最終日が働いた分だけずれるということです。
たとえば、11月31日が所定給付日数の最終日だとすると、4時間以上のアルバイトを1日したことで12月1日が最終日に変わります。
ただし、失業手当がもらえる期限は離職日の翌日から1年間です。
先送りばかりが続いて、失業手当がもらえる期限内におさまらないと、受給対象外になるので注意してください。
1日4時間未満の労働は失業保険の減額になる
失業手当の受給中に1日4時間未満の労働をおこなうと、給付額が減額されることがあります。
減額の流れは、以下のとおりです。
- 給付額減額に該当するアルバイトを実施する
- アルバイトした直後の失業認定日に、ハローワークに収入額(働いた分の給料)を申告する
- 申告を元に給付額が減額される
減額幅は、以下の計算式で求められます。
失業手当受給中に1日4時間未満のアルバイトをすると、受給額の減額に加えて所定給付日数も消化されてしまいます。
本来もらえるはずの失業手当の総額から少なくなってしまうので注意してください。
申告しないと失業保険の返還を求められる場合がある
失業手当を受給している間に働いた場合は、勤務形態や給与の有無に関係なく申告が必要です。
正しく申告しなかった場合は「不正受給」とみなされてしまうので注意してください。
あわせて、他の不正受給の典型例も確認しておきましょう。
- 実際にはおこなっていない求職活動を申告している
- 自営や事業を始めているのに申告していない
- 会社役員に就任したのに申告していない
- 定年後、就職する気もないのに失業手当を受給している
不正受給が確定した場合は、失業手当の支給停止だけにとどまらず、受給した失業手当の返還を求められます。
さらに、返還を求められた失業手当金額の2倍相当額を納付するように命じられてしまうので、アルバイトやパートの申告は正しく記入しましょう。
失業保険の受給中に働いたアルバイト・パートがバレる3つの理由
失業手当の受給中に働いたアルバイトやパートは、次の3つの理由でバレてしまうため必ず申告しておきましょう。
- 勤務期間によって雇用保険に加入する必要があるため
- 雇用主は「給与支払報告書」を市区町村に提出するため
- 知り合いから通報されることもあるため
安易な気持ちで申告を怠らないように、それぞれ確認しましょう。
勤務期間によって雇用保険に加入する必要があるため
雇用保険の加入手続きは、事業所が所在する地域を管轄しているハローワークで管理されています。
そのため「週20時間以上・31日以上の雇用」で雇用保険に加入すると、隠しているアルバイトやパートはすぐにバレてしまうのです。
参考:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか! |厚生労働省
手続きは、雇用先がハローワークの窓口でおこなうので、自分の意思とは関係ないタイミングで雇用保険の加入は進められます。
バレていないと思っても、忘れた頃に発覚する場合もあるので注意してください。
雇用主は「給与支払報告書」を市区町村に提出するため
アルバイトやパートを隠しても、雇用主が市区町村に提出する「給与支払報告書」でバレます。
給与支払報告書とは税金の計算目的で作成される書類です。
給与金額に関わらず、市区町村に必ず提出されます。
この給与支払い報告書は、マイナンバーと紐付けされます。
行政はマイナンバーの情報連携をおこなっているため、ハローワークも「給与支払報告書」の内容を確認でき、アルバイト・パートの履歴がバレる仕組みです。
知り合いから通報されることもあるため
知り合いからハローワークへ通報されることも、アルバイトやパートがバレる原因の一つです。
ハローワークでは「第三者の通報」がアルバイトやパートがバレるいちばんの理由と言われています。
身近な人の不正に対する、正義感や妬みの感情から通報してしまうのでしょう。
通報者は公表されないので、自分自身の中で疑心暗鬼になって人間関係の悪化につながることも考えられます。
通報されないように気を付けるよりも、不正をはたらかずに正しい条件の中でアルバイトやパートを始めるこがおすすめです。
失業保険の受給中にアルバイト・パートを探すおすすめの方法3選
失業手当を受給中のアルバイトやパートは「週20時間未満・31日未満の雇用」という制限の中で探さなくてはいけません。
そのため、長期雇用で探すよりも短期・単発の仕事が探せる、以下のサービスの利用が適しています。
- 単発バイトアプリの利用
- 派遣会社への登録
- クラウドソーシングの活用
それぞれの特徴を解説するので、自分に合った方法を利用してみましょう。
単発バイトアプリの利用
単発バイトアプリは、面接や履歴書の提出なしで1日単位から働ける特徴があります。
アプリ上で求人検索や応募、企業とのやり取りも完結できる点がメリットです。
また、自分のスケジュールに合わせて働けるため、求職活動にも支障が出にくいでしょう。
ただし、毎回自分で仕事を探す時間の確保が必要であるため、仕事探しに時間を費やさなくてはいけないデメリットがあります。
派遣会社への登録
派遣会社では、短期・単発の仕事も紹介してくれます。
担当者が仕事を紹介してくれるため、自分で探す手間が省ける点がメリットです。
また、仕事の不明点や派遣先での悩みについても担当者に相談できる環境もあります。
ただし、希望している条件にあう仕事がなければ、紹介が来ないというデメリットは考慮しておきましょう。
クラウドソーシングの活用
プログラミングやライティングなどのスキルがある人は、クラウドソーシングを利用すると関連した仕事の募集を見つけられます。
案件によっては、自宅で仕事を完結できる点がメリットです。
また、スキル次第ではフリーランスとして活動する道も開けるでしょう。
ただし、案件が獲得できるかは自分の能力次第です。
常に仕事が用意されているわけではないので、案件が獲得できなければ収入が不安定になりやすいデメリットがあります。
FAQよくある質問
アルバイトを申告せずにバレなかった人はいる?
アルバイトを申告せずにバレなかった人は過去にはいたかもしれません。
しかし、現在はマイナンバーの普及にともなって、行政の情報連携が強まっています。
いつ、どこで、何がきっかけでバレてしまうかわからない状況です。
「不正受給」を疑われないためにも、正しく申告しましょう。
手渡しで給料をもらうアルバイトならバレない?
給料が手渡しなら、自分の銀行口座に履歴が残らずにバレないと考える人もいるかもしれません。
しかし、雇用先は手渡の給料の分もしっかり「給与支払報告書」で市区町村に報告しています。
安易に隠さないで、失業の認定日に申告しましょう。
資産運用で得た収入も申告する必要はある?
資産運用で得た利益は「労働の対価」ではないため、申告は不要です。
ただし、専業で行なっている場合は申告が必要になる可能性もあります。
不安に思う方は、一度ハローワークに相談してみましょう。
失業保険を受給中にアルバイトすると損になる?
必ず損になるとは言い切れません。
しかし、1日4時間未満の仕事を続けてしまうと、本来もらえるはずの受給額から減額されるため損になるでしょう。
とはいえ、目先の生活を安定させることも重要です。
自分の生活状況と照らし合わせて判断すると良いでしょう。
さいごに
失業保険をもらいながらアルバイトやパートで働く条件と注意点について解説しました。
「支給の先送り」や「減額」されないように働くには、以下の4つの注意点を意識した仕事選びが重要です。
- 週20時間未満・31日未満の雇用であること
- 日給と基本手当日額の合計が前職の賃金日額の80%以内であること
- 1日4時間以上の労働は失業手当の支給先送りになること
- 1日4時間未満の労働は失業手当の減額になること
ただし、失業手当の受給中は職業訓練でスキルを高めて、転職後の年収を上げるチャンスでもあります。
興味がある方は、下のリンクから詳細をチェックしてみてくださいね!
一覧へ戻る監修者
平原正浩
ワークキャリア株式会社 求職者支援訓練 本部運営チームリーダー
ワークキャリア株式会社の本部にて、職業訓練校「ジョブトレ」の運営業務全般を統括する。主な業務は訓練制度の把握や訓練運営体制の整備、開校申請など。
ライター
いしい ゆうすけ
Webライター
ワークキャリア株式会社の求職者支援訓練事業「ジョブトレ」にて、SEOメディアの執筆を担当。過去に販売職から営業職への転職経験あり。自分自身が悩みながら行動した経験をもとに、読者の問題解決につながる記事を目指して執筆している。